
カワサキのマッハの割れてしまったというトップブリッジを
直したいというご依頼。

えー、アルミの鋳物ですので、溶接と言っても、多分なかなか
厳しい感じだと思われ、やってやれない事な無いですが、手間を
かけて作業した割りにはあまり良い仕上がりにはなりませんゼと、
ご説明申し上げましたが、まず交換用の部品は手に入らないし、
手に入ったとしてもどんな状態はか判らないので、とにかく
この部品で再構築してみたい、というご要望を頂きまして、
であれば、やってみようという事に。
破断面を頼りに、位置決めして溶接しますが、表面だけ付けても
アッと言う間に割れると思われますので、断面を全て溶かして
くっつけるべく、まずは外側面に開先を取って、一巡溶接。
その後内側に開先を取って溶接して、再度外側を盛り上げる
三段階作業という作戦。


当初、破断面を半分残して、指で押さえている隙に
点付けして~、なんて超絶スウィートな事考えてましたが、
実際にやってみると絶対にズレて付ける自信がみなぎったので、
位置決めサポート材兼溶接用アースポイントとして
丸棒を削って治具的な部品を作ってみました。
多分ステムのシャフトは38mmのなんだろうなぁっていう感じ
だったので、位置決め用だからなるべくピッタリで少々
きつめくらいの方が良かろうと、変な色気を出して38mmチョッキリで
削ってみたら、既に穴が歪んでいたようで上手く入らず、
再度旋盤にチャッキングし直して37.93くらいにしたらやっとこ通りました。
使い込んだ部品ですから、机上の空論通りにはイカンですな。




てな事で、位置決めが出来たので、溶接開始。
とは言っても、最初に仮付けした時点で破断面はビミョーに
動いてしまうので、やれる範囲で頑張りますっすて感じ。
ここからは全く余裕が無いので、途中の写真はほとんど無し(笑)




この穴がなかなか埋まらなかった
とりあえず、折れた部品が固定できたところで、
コンターマシンを使って内側に開先を掘りまして、
狭い所に無理矢理トーチを突っ込んで溶接。
ウチの非力な溶接では、ほぼフルパワーな作業になりますし、
鋳物特有の何かゴミ的なモノが鋳込まれてちゃっているか、
湯になった材料が上手く流れず、表面張力でブローホールのような
クレーター状の穴がなかなか埋まらず苦労しました。
溶棒入れちゃうと、中に空間が残ってしまう事が多いので、
全体がデロっと行っちゃうか否かって感じまで粘って、なるべく
チュルンと湯が流れるまで忍の一文字(笑)

溶接ビード部分の逃げる空間を削りました


内側の本溶接が済んだところで、位置決め用の治具に
内側の溶接ビード部分を逃がす空間を削って、
トップブリッジに差し込めるように改造。
案の定、少々内側に倒れ込んで、治具はスルっとは
入らなくなってましたが、ムリクリ突っ込んで
外側を本溶接。




てな事で、結局3時間半くらいかかりましたが、
ようやっと全ての作業が完了。
外形を削って成型する時に、なるべく凹まないように
なるべく盛り盛りに溶接しておいたつもりです。
とりあえず、上手く付いたんでないかと思います。
最終的な仕上げは、お客様が行うという事で
ワタクシの作業はここまで。
熱が引けて固まるまで、治具を入れて軽~くボルトで
押さえて放置です。
よく、割れた部品を溶接したらまた使えるでしょう
ってお話を頂きますが、実際には形も崩れますし、
塗装はダメになってしまいますし、溶接は簡単で万能って
訳では無いって事がお解り頂けるかと思います。
それでも、って事であれば、いくらでもお手伝いは
させて頂きます。
皆さまからの作業ご用命をお待ちしております。
<(_ _)>